mushroom on the poolside

女の子はお砂糖とスパイスでできてない 

祭のあと

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下北沢駅から少し離れた
一戸建てやアパートが多く立ち並ぶ町の一角に北澤八幡神社がある

年に一度のお祭りの時は下北沢の街が祭り一色になる
神輿を担ぐ威勢のよい声が響き 半纏を着ている人達が街に溢れている


賑わっている街の中で 私は少し切ない気持ちになる
夏が終わってしまう合図だからだろうか・・・ 

 

小さい頃 近所の神社の夏祭りには祖父母が連れて行ってくれた
お祭りの日の夕食は ちらし寿司とお吸い物と決まっていて
私は錦糸卵を山盛りにしてもらう
ばぁちゃんに浴衣を着せてもらって
履き慣れない下駄を履いて 神社までの道を歩く
いつもより車通りは少なく みんな楽しそうに歩いている
神社まで続く赤と白の提灯がふわふわと浮いていて
さっきまで明るかったのに急に暗くなってしまった道を優しく照らす
神社が近くなると 普段かぐことのない夏の夜の匂いに混じって
わたあめの甘いにおいと醤油の香ばしいにおいがして
なんだか違う世界に迷い込んだような気分になる 

 

じいちゃんは少し先を歩いていて 時々後ろを振り返って立ち止まるけれど
 人ごみに消えて見えなくなってしまうから
じいちゃんが迷子になったらどうしよう・・・と心配になる
「大丈夫よ」と言うばぁちゃんを引っ張ってじいちゃんを追いかける
がんばっても追いつかないのだけれど
じいちゃんは神社の入口で待ってくれていて少し安心する
お賽銭をもらって お参りをし終わると
神社をぐるっと ひと通り歩いてまわる


かき氷・わた菓子・ヨーヨー・金魚すくい・型抜き・くじ・りんご飴・・・

あれもこれもとおねだりをして満足したら
そろそろ祭りも終わる時間だ
周りを見渡すとみんな笑っている
神社がやさしい空気で満ち溢れている

 

帰り道 下駄で足が痛くなって歩けないので裸足で帰る

 

 

夏祭りが終わると


ふわふわだった綿菓子は溶けてベトベトになる
ヨーヨーはしぼんで水が抜けてしまう
田舎へ帰ってきていた親戚は都会へ戻ってしまうし
プールは終わって 海もクラゲが多くなるから入れなくなる
うるさかったセミの声も少し落ち着いてきて
残った花火も湿気ってしまって遊べない
あんなに楽しかった夏がまるで幻みたいに思えた


肩に残った日焼けの跡だけが 楽しかった夏の証拠みたいで
だんだん薄くなってしまうのが嫌だった

この神社のお祭りを見ていると
楽しかったけど なんか切ない 夏 を思い出す