mushroom on the poolside

女の子はお砂糖とスパイスでできてない 

東京

f:id:mushlee:20150109180807j:plain

 

地元を離れる時 私は

恋人に振られても未練がましくすがりつく女の様に

「行きたくないよぅ」を連呼する

うざい 確実にうざいよ

 

 

お土産という名目の大量の救援物資と共に

仕方なく東京へと向かう車に乗り込む

仕事を中断し玄関先まで見送りに来てくれる 父と 未だに別れ際涙ぐむ母と

嫌々こたつから引きずり出された我が家の愛犬

ぐずぐずと稼いだ時間も虚しく 容赦なく踏み込まれるアクセル

 

3つの影が見えなくなって

やっと諦めがついた心にテロップが流れる

 

 

----この物語はフィクションです---- 

 

 

そう フィクションだ

5年前まで現実だった地元での生活はもうリアルではない

私の通常営業はコレ

 

 

小さくなっていく家族に手を振るとき

あぁ私に”必要なモノ”は全部

何もないと思っていた この場所に あったのだと思い知らされる

 

 

家族がいて

友達がいて

夏は河原や海でバーベキューをして

冬は焚き火をしながら満天の星を見て

お気に入りの道を犬とさんぽして

空が広くて

海がキレイで

 

七輪とタオルケットと大量の音楽CDを常載した

本当はベージュだけど シャンパンゴールドだと言い張っていた軽自動車で

家族と友だちと恋人と

時間も方角も気にせず

いつでもどこへでも行けた

 

私は今東京にいて

あぜ道を歩く代わりにアスファルトを踏みしめて

青空の代わりにビルを見上げて

海は泳ぐ場所ではなくなって

火を起こすスキルは役に立たないし

星空をノスタルジックで諦めている

 

  

東京は

こんなにも多くの物と人に溢れているのに

何もないなぁ と感じてしまうのは

 

私の要領の悪さとか アナログさとか 甘えのせいなのだけれど・・・

 

 

地元で過ごす 日々は

優しくて 暖かくて 無条件に愛されて 守られている

故に私の周囲警戒レベルは 0 だ

バブルスライム・・・

雑煮に溶けた餅・・・

それくらいゆるい

このまま溶けてしまって車から抜け出し

全て投げ出してしまおうか・・・

 

 

いや そんなことはしない

全部 全部 自分で決めたことなのだから

そうだ 戻ったらやらなければならないことがたくさんある 

 

ま、まずは装備を充実させて・・・

防御力を上げて・・・

それから通常営業に・・・

・・・